気質(temperament)とは、その人となりの特徴の基底をなすものであり、永続的で安定した部分で情緒性にかかわる部分であります。
日本語の日常語には「気質(かたぎ)」という言葉がありますが、これは「職人気質」とか「昔気質」というように、その人の性格の傾向を表わします。同様に心理学でいう気質(きしつ)も、こうした性格の全体的な方向性を意味するものであります。
しかし、「かたぎ」と「きしつ」が異なるのは、前者がその人の経験や社会的位置、職業、世代と言った要因によって後天的に決定されるのにたいして、後者の方は遺伝的、体質的に規定されます。生得的なものと考えられています。
昔から気質には個人差があると考えられていました。
古代ギリシャ医聖ヒポクラテス(前460~前 375年ごろ)は、ギリシャ思想の四大元素※の考え方を基にして、人間の身体には四種類の体液があると考えた。血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁であり、これらの体液の配分と混合差が体質を決定し、それらのバランスが崩れると病気になると考えた。
例えば、黒胆汁が多くなると憂うつな気持ちのメランコリーになり、黄胆汁が多くなるとかんしゃくもちになる、と。ヒポクラテスはこの体液理論を臨床上の疾患や身体と結び付けて考えていた。
これを気質として人間の性格や精神を説明するためにもちいたのが、ガレノス(129~199年ころ)である。ガレノスは、それぞれの体液のうちでどれが優位かで、その人の体質ばかりでなく心の状態も影響を受けていると考えた。
それによると、血液質の人は楽天的で社交的、粘液質の人は冷静沈着で鈍重、黄胆汁質の人は決断力があり感情の変化が激しい、黒胆汁質の人は憂うつで内省的といった具合である。
こうした体液と気質(性格)特徴との関連は、現代の医学では否定されているがガレノスの考え方は、ヨーロッパ中世から近世まで受け継がれ占星術をはじめ広い分野に影響を与えた。
このように、気質はその人の体質と関連し先天的要因が強いと考えられる。これに対して人格は、先天的に決定されるのではなく、後天的な要因が強く、更にいえばその人、個人によって作り上げていく、意識的な要因を含んでいます。