運のよい人、悪い人


                     脳科学からみた「祈り」中野信子著より

 

 京都大学の藤井聡教授が「認知的焦点化理論」という心理的アプローチから「運」の正体に迫った。

 「認知的焦点化理論」とは、「人が心の奥底で何に焦点を当てているか?」によって、その人の運の良し悪しまでが決まってくるという考え方です。

 その研究結果では、利己的な人ほど、自分は幸福でないと思ったり、周囲の人々に比べて不幸だと思う傾向が強いということが示されました。

 認知的焦点化理論では、どのくらい遠くの他人、そして遠くの未来のことまで配慮できるかということを「配慮範囲」と言います。

 人の心の「配慮範囲」には、「関係軸」と「時間軸」があり、関係軸には、家族、親戚、友人、知人、他人を。時間軸には現在、数日先、自分の将来、社会

の未来という順にメモリを取ります。

 「現在の自分」を原点として、自分から離れれば離れるほど、範囲が広くなります。

 利己的で自分のことしか考えられず、目先の損得にしか関心のない人は配慮範囲が狭く、逆に、他人や遠い将来のことまで思い馳せることのできる人は配慮範囲が広くなります。

 藤井教授の研究によれば、配慮範囲の狭い利己的な人は、ある程度まで効率よく成果をあげるものの、目先のことにとらわれて協力的な人間関係が築けないため、幸福感の感じられない人生となるとのことです。

 逆に、配慮範囲の広い利他的な志向を持つ人は、良い人間関係を持続的に築けるため、自分の周囲に盤石なネットワークを作ることが出来る人。言い換えれば、周囲のみんながこぞってその人を助けてくれるわけです。

このことが一見「運のよさ」のように見えるそうです。